甘えることは許されない

柳沢寿男『甘えることは許されない』@アテネフランセ
「〜してはならない」と自律を促す施設の訓示は、障害者への無関心から来てるんじゃないの?というテーマがあるけど、困難に耐えながら生きてる君たちは美しい!なナレーション(亀井文夫譲りの戦略か?)のおかげで見てるとやや解釈に迷う。最初30分くらいまで監督のスタンスは「働く障害者を応援する」だと思うし、たしかに働くための場所としてその施設は存在する(検索したらまだ運営してた……改善されてると思うけど)。クライマックスの彼の姿は美しい...。しかしそんな彼を見ずに訓示を垂れる連中は、給料を手渡しする瞬間でさえ徹底して映されない。
@napo_ooooooo さんのつぶやきを読んで思ったが、着替えを延々撮ったラストは「甘えることは許されない」という施設側の発する紋切り型な訓示を、施設側だけでなく見ているこちらにも切り返す力があった。撮る側の甘えを許さないハードなものだったと思う。
ラストカット、殺風景な室内での青、白、黄の色彩感覚に強く惹かれる。
https://twitter.com/#!/napo_ooooooo

糸の切れた凧

井川耕一郎監督、渡辺護主演『糸の切れた凧 渡辺護が語る渡辺護』の試写に呼んでいただいた。
渡辺護への自宅でのインタビューが中心。初監督作『あばずれ』を完成させるまでの遍歴を語る。
結核で亡くなった兄に始まり、『あばずれ』の冒頭での父の自殺をめぐる井川耕一郎監督の指摘など、そこかしこに「死」や「血縁」について、渡辺護と井川耕一郎それぞれの特色が反映されている。
俳優経験を振り返りながら、何度も出て来る「昔の俺はかっこよかった」話、中でも「扶養」のエピソードがおかしい。だが実際、この映画の渡辺護の仕草は今でもかっこいい。特に彼にとって最初の強烈な映画体験である『雪之丞変化』と、『あばずれ』でのアクションシーンを身振り手振りで再現する姿は、自宅のこたつに座ったまま上半身だけで動かしているのに、とても様になっている。
そんな「俳優」渡辺護の最も映えるシーンは、『あばずれ』で主演女優をしごいたエピソードに続き、現時点での最後の劇映画『喪服の未亡人 ほしいの…』のメイキングにある。渡辺護マキノ雅広同様、自ら演技の模範をして俳優を動かそうとするが、渡辺護の動きは『喪服〜』での異様な仕草のひとつひとつを本当に自分のものにできていて、しかも早い。それと向き合わなくてはならない女優はどうなるのか。まるで監督と俳優どころか、ふたりの俳優が対決している劇を見せられてるような、そんな向き合い方をしている。彼は女優に「なんだこのやろう」と睨み返すような眼つきを要求するが、その「眼」はフィルムも失われた『あばずれ』のオープニングを、『雪之丞変化』と『あばずれ』に通じる「復讐」について熱く語るインタビューシーンを思い出す。
詳しくは書かないが「OK」を出しながら激高する渡辺護の姿と言葉を聞くと、自分に人を演出する事なんかとてもできない……と思う。インタビューをする井川耕一郎の声も終盤、場所を映画美学校に変え、真剣味を増すのだ。
渡辺護の俳優から睨み返される瞬間、それは『あばずれ』の自殺した父からの視線について尋ねる井川の声によって、彼の出生をめぐる冒頭部と結びついていく。

中国インディペンデント映画祭期間中

中国インディペンデント映画祭期間中、ポレポレ東中野にてDVUvol.3を発売します。

映画芸術ダイアリーにて、主催の中山大樹さんへインタビューしました。
http://eigageijutsu.com/article/236962523.html

【中国インディペンデント映画祭2011】

開催期間:12月3日(土)〜16日(金)
会場:ポレポレ東中野
料金:
当日券:一般1500円/大学生・専門学校生1300円/中学生・高校生・シニア1000円
3回券3600円(ポレポレ回数券[10回券10000円]もあります!)
前売券:3回券3600円
前売り券は劇場窓口、チケットぴあ(Pコード:463−222)で発売中
WEB:http://cifft.net/index.htm
Twitter: @cifftnet

【関連イベント】

◎日吉電影節2011
日 時:12月7日(水)
16:30〜作品上映 『新鋭監督短編集』
18:15〜講演会 ゲスト:章明氏・中山大樹・他
場 所:慶應義塾大学日吉キャンパス第4校舎B棟J19教室
入場無料・参加予約不要(但し満席の場合は入場を断らせていただく場合があります)
主 催:慶應義塾大学教養研究センター日吉行事企画委員会(HAPP)
協 力:日吉電影節実行委員会
連絡先:dianying@ml.keio.jp(吉川)

◎武蔵野美術大学造形研究センター イメージライブラリー映像講座
徐童監督「収穫」上映と講演
日時:12月9日(金)時間未定
上映作品:『収穫』(2008年/98分)
講演ゲスト:徐童(シュー・トン)氏・中山大樹
場所:武蔵野美術大学 鷹の台キャンパス
入場無料・参加予約不要
主催:造形研究センター
運営:武蔵野美術大学 美術館・図書館 イメージライブラリー
連絡先:042-342-6072(Tel/Fax)
※詳細についてはHPでお知らせいたします。 http://img-lib.musabi.ac.jp/event/event.html

◎場外シネマシリーズ3
轟轟烈烈!! 中国インディーズ・ムービー <冬>
 年々新しい作品が生まれ、活動が盛り上がる中国の自主制作映画。最近は日本でワン・ビン監督作品の劇場公開が決まり、特集上映も開催されるなど、注目を集めている。今年の東京フィルメックスでも、たくさんの中国インディペンデント作品が取り上げられた。
現在の世界を見つめ、表現する方法の一つが、中国のインディーズ映画の中にある。
 場外シネマ研究所は、今回の企画を通して参加者やゲストと共に、その不思議な魅力の在処を探る。
 中山大樹さんによる「中国インディペンデント映画祭」が最新の中国作品を届けるのに対して、インディーズ最初期から近年までの作品を幅広く選び、彼らの道のりをたどれるようなプログラムとした。9月に開催した「パート1 北京のざわめき」を発展させた、パート2・3・4の連続上映!
*場外シネマ研究所:映画館ではかからない映画を自主的に上映するグループ。今回が第3弾です。

パート2 新星 12月10日(土)『犬吠える午後』
会場:ポレポレ坐カフェ
14:30 上映 ・ 16:00 中国インディペンデント映画祭のために来日中の監督トーク
パート3 世界に発する 12月17日(土)『一緒の時』 『慰問』(特別参考上映)
会場:光塾
15:00 上映 ・ 16:30 野中章弘さん+中山大樹さんトーク
パート4 草創期の光 12月17日(土)『流浪北京 最後の夢想家たち』
会場:光塾
18:30 上映 ・ 20:15 秋山珠子さんトーク
*1プログラム 1,000円(ご予約受け付けます!)
*ご予約・お問い合わせは 場外シネマ研究所(中村・佐藤) jougaicinema@gmail.com まで
詳細はhttp://ameblo.jp/jougaicinemaをご覧ください。

DVUvol.3 販売する上映会

オーディトリウム渋谷 http://a-shibuya.jp/archives/1268 にてペドロ・コスタジャンヌ・バリバール特集期間中から発売中です。

そして「キノ・トライブ2011」にて販売させていただいております。

さらに!

場外シネマ http://ameblo.jp/jougaicinema/theme-10040873756.html でも販売決定! 今週土曜日にはぜひ!

DVUvol.3発売決定

大変お待たせしましたが、8月29日(月)よりDVUvol.3を発行いたします。

今回は通販をメインに販売予定です。購読希望されるかたはduv_davu@hotmail.co.jpまで御名前・お届け先・冊数をご記入の上、送信下さい。800円(送料込み)のお振込みを確認次第、お送りいたします。振込先は【みずほ新宿新都心支店 店番号:209 口座番号:1262404 名:ダブ】になります。

売店舗:
模索舎 http://www.mosakusha.com/newitems/
タコシェ http://tacoche.com/?p=5553
ジュンク堂池袋本店 1階雑誌コーナー・9階映画コーナー http://www.junkudo.co.jp/tenpo/shop-ikebukuro.html

     

・特集「ポルトガル現代映画作家 ジョアン・セーザル・モンテイロ

赤坂太輔、葛生賢両氏によるジョアン・セーザル・モンテイロをめぐる対談「この武器=イメージでぼくは何をするのか」のほか、モンテイロがキャリア初期の70年代に執筆したグリフィス、ムルナウトリュフォー、ストローブ、そして自らの初期短編についての批評を掲載します(訳:葛生賢)。

対談:赤坂太輔×葛生賢 この武器=イメージでぼくは何をするのか/ジョアン・セーザル・モンテイロフィルモグラフィ/翻訳:セルフインタビューほか 著:ジョアン・セーザル・モンテイロ 訳:葛生賢/マルコ・ベロッキオの足跡(赤坂太輔)/ゴダール・ソシアリスムと豪華客船の映画史(葛生賢)/対談:松村浩行・佐藤雄一/中国独立電影体験(前田佳孝)/中止させられたドキュメンタリー映画祭(中山大樹)/インタビュー:ロウ・イエ
2011/62ページ/A5サイズ/800円

編集員:中山洋孝 滝本龍/表紙写真:種子貴之/
発行:DVU編集委員会/アドレス:duv_davu●hotmail.co.jp (●を@に変更を上、送信お願いいたします)
ブログ:http://d.hatena.ne.jp/dvu/


バックナンバー


弊誌2号購入ご希望のかたは、アドレスまで御名前・御住所・連絡先・冊数を記入のうえ「バックナンバー購入希望」の件名でお送りください。振込みを確認次第、発送いたします。

『人喰山』のアニメーション作家、新谷尚之を特集。書き下ろし漫画も掲載。
インタビュー:浅井隆/西村隆/市山尚三/取材:レンタルビデオ店「ふや町映画タウン」
サイズ:A5/頁数:136/販売価格:800円

「新日本作家主義烈伝vol.11 大工原正樹」(アテネ・フランセ文化センター・3月5日(土)14時〜)

3月5日より久しぶりに新日本作家主義烈伝がアテネフランセにておこなわれます! 前回はたしか04年の上野俊哉監督特集でしたから、7年ぶりということでしょうか……。



http://www.athenee.net/culturalcenter/program/shin/d.html
アテネフランセ
http://d.hatena.ne.jp/inazuma2006/20110301
(プロジェクトINAZUMA)
http://d.hatena.ne.jp/inazuma2006/20090828

vol.11 大工原正樹
2011年3月5日(土)
14:00-「風俗の穴場」(74分)
http://d.hatena.ne.jp/inazuma2006/20061208
http://d.hatena.ne.jp/inazuma2006/20070611
(大工原監督による作品解説。当時の記憶をたどる文章も魅力的です)
15:20-「赤猫」(42分)
http://d.hatena.ne.jp/inazuma2006/20060528/p2
小出豊監督による批評)

16:10-「姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う」(49分)
17:10-トーク:大工原正樹(映画作家)、荻野洋一(映画作家)、万田邦敏映画作家

『閉ざされた谷』ほか (ジャン・クロード・ルソー) @法政大学

http://d.hatena.ne.jp/paulowniacahors/20090427 (『閉ざされた谷』について語るジャン=クロード・ルソー 聞き手:Cyril Neyra)

法政大学にて鑑賞。ルソーの映画では幾度もけたたましく電話が鳴り、ルソー本人が受話器をとり見えない相手(フレーム外の存在)に声をかける。不意に自分を呼び寄せる記憶。逃れられない、自らにとっての重要な時間を生きていることが、彼自身の声、言葉、読み上げるテクストによって伝わる。(ジョナス・メカスにとっての亡命後の時間)
ルソーの映画ではたびたびフィルムを使い切るくらい延々同じ画面がフィックスで映し出される。8mmでの作品ならそれぞれのショットで白味の部分まで映すこともある。そこでルソー本人がときにフレームを横切り、極端に遅く動いたり、特に意味のない行動で時間を潰しているようでもある。(ウォーホル、もしくはポール・モリセイの映画のように延々無為につづく時間)
回帰してくる記憶とともに、意味も無く費やされるガレルや小津の映画のような時間かもしれない。
フレームを意識した画面と、攻撃的な音響が、ルソーの映画を厳密に構築された作品なのに、あえて繋がりを放棄した映像の断片のようにもしている。